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詩は世界をつなぐ~フランス・ポエトリーリーディング見聞録~第11回

2015-04-15

こんにちは。村田活彦です。憧れのバンド、テット・レッドを追いかけて、アヴィニョンまでやってきました。

 

さてみなさん、フランス南東部、アヴィニョンの町をご存知でしょうか。教皇庁宮殿(Palais des Papes)をはじめ、歴史的建築物が数多く残っていて、それらの地区は世界遺産にも登録されています。童謡「アヴィニョンの橋の上で」で知られるサン・ベネゼ橋も観光スポットのひとつ。

 

ただし私がアヴィニョン駅に降り立った7月26日、ここは世界遺産の町というより町ごと巨大な学園祭みたいになっていました。そう、これが3週間以上つづく夏の名物、アヴィニョン演劇祭。70年近い歴史を持つ、世界最高峰の演劇フェスです。その最終日の大トリの舞台でなんと、愛するテット・レッドが朗読ライブをやるというのです。これは行かねば。

 

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駅前のロータリーを横切って信号を渡ると、目の前に町のメインストリートRue de la Républiqueがまっすぐ伸びています。歩いていくと、道の両側に並ぶスーパーも雑貨屋も銀行も、あらゆる建物の壁が公演ポスターでいっぱい。町のいたるところ、大小さまざまな劇場で毎日芝居を上演中なのです。なにしろ期間中に上演されるのは公式プログラムが約40作品、「OFF」と呼ばれる自主参加プログラムは約1300作品以上。こちらの劇場で開幕ベルが鳴ったと思ったら、その10分後にはあちらのミニシアターの幕があがるといった具合です。

 

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通りではあちこちで大道芸人がパフォーマンスをしています。ジャグリングの周りには2重3重に人の輪ができているし、操り人形芝居の前には子供たちが座り込んで見ている。移動遊園地もある。キョロキョロしながら歩いていたら、前から妖精さんが歩いてきました。ステージ衣装のまま、チラシ配りしているわけか。ほかにも摩訶不思議な衣装やメイクをした人達と何人もすれ違います。「まもなく上演でーす」と声をあげていたり、広場で告知のための寸劇をしていたり。

 

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かと思えば、プロレスの興行まで出ていました。日本から来たという、その名もアジア・ゴールド・プロレスリング。覆面レスラーの彼はマスク・ド・フェニックスさんです。なぜ演劇祭にプロレスが?という気もしますが、彼らはプロレスを大道芸で見せる団体。最初はアヴィニョンの劇場に直接メールして交渉したそうですよ。

 

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空は快晴。直射日光とフェスの熱狂というダブル攻撃でクラクラしながら人混みのなかをさらに歩きます。フェスティバルの総合案内所に寄ってみましょう。ここでイベントプログラムをもらえます。公式プログラムと「OFF」プログラムが別なのですが、「OFF」のほうは400ページ。持ち歩くのはちょっと大変なくらいの重さです。パラパラめくっていくと演劇祭とはいえ、芝居以外のイベントもちらほら。お?ジャンル別で「SLAM」と記載された演目もありますね。よし、行ってみますか。

 

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着いたのは町のちょうど真ん中あたり、Chapeau Rouge Théâtre という小さな劇場。階段状の席にお客さん30人くらいが座っていて、それですっかり満席という感じです。登場したのはVas-y Piano という二人組、いやこれは公演名かな。ピアノとSLAM(ポエトリーリーディング)のセッションで、マイクを握るのはハンチング帽にデニムとスニーカーのイケメン。てっきりヒップホップ調のリズミカルなリーディングが始まるかと思いきや、ピアノが奏で出したのは優しい旋律でした。そこに、落ち着いた声の流れるような朗読が重なっていきます。目をつぶって聴いていると、古いフランス映画の予告編が流れているみたいな感じ。一口にポエトリーリーディングといっても、いろんなバリエーションがありますね。

 

劇場をあとにしてRue de la Républiqueに戻り、さらにまっすぐ歩いて行くとやがて教皇庁前広場にたどり着きます。ここでも大道芸人がジャグリングのパフォーマンスを披露中。その後ろには高い塀がそびえ立っています。この城壁の向こう、宮殿の中庭が演劇祭のメイン会場であり、テット・レッドの朗読ライブ「CORPS DE MOTS」のステージです。しかしこれ、世界遺産ですよね? ここでライブするのか。すごいぞテット・レッド。

 

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実は今回のアヴィニョン公演では、もうひとつビッグニュースがあるはずでした。かの名女優ジャンヌ・モローが、ゲストとしてテット・レッドと共演する予定だったのです。が、ご高齢のためか残念ながらジャンヌが出演できなくなってしまいました。クリスチャン・オリヴィエとジャンヌ・モローがデュエットした渋い名曲“Emma”のプロモーションビデオはYouTubeでも観られるのでチェックしてみてください。

「Emma」

 

さてさて。

 

テット・レッドのライブは明日の夜。ともかくもチケットをゲットしなくちゃいけません。もちろんネット予約済みなので、大会事務所に行って発券してもらえばいいだけ。まあ、それくらいならフランス語が通じなくてもなんとかなるでしょう。カウンターで予約番号を伝え、この番号でチケットに引き換えてほしい、と英語で伝えました。窓口のムッシューはどうやら聞き取りに四苦八苦している様子。私の英語はフランス語に負けず劣らず片言なので、まあ仕方がないでしょう。「つまり、このナンバー を、チケットに、チェンジして、プリーズ」みたいな調子で説明をしていたら、ようやく理解してくれたようです。奥からチケットの入った白い封筒を持ってきました。

 

「ジャンヌ・モローがキャンセルになったことはご存知ですね」

ウィ、知ってます。

「お名前はムッシュー・ムラタですね?」

ウィ、そうですそうです。

 

窓口の彼はOK、と小さくうなずいたかと思うと、チケットを封筒ごと破り始めました。ビリビリビリビリビリ。え、ちょっと!なにすんの!!

 

 

と、いうところで呆気にとられたまま、また次回。À bientôt!

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