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詩は世界をつなぐ~フランス・ポエトリーリーディング見聞録~第17回

2015-06-15

先週6月1日朝11時、成田空港発エールフランス275便のシートに座っていました。手荷物のなかには2台のビデオカメラ。目指すはパリ、シャルル・ド・ゴール空港。

ボンジュール、村田活彦です。覚えていらっしゃるでしょうか。連載8回目、昨年のポエトリースラム(詩の朗読)W杯で、主催者のPilot氏から「お前がポエトリースラム日本大会を開催しな」と言われたこと。その言葉にまんまとのせられ、本当に日本選手権大会を主催。優勝者、つまり日本代表とともに、ポエトリースラムW杯2015に乗り込む、というわけです。

と、その前にまずはポエトリー・スラム・ジャパン2015の話から始めないといけませんね。これまでも日本で、詩の朗読競技会はいくつかありました。有名なのは「詩のボクシング」でしょうか。SSWS(シンジュク・スポークン・ワーズ・スラム)という、深夜の歌舞伎町で行われた伝説のシリーズイベントもありました。とはいえ、国際大会につながるポエトリースラムはこれが初めて。正直なところ参加者が集まらなかったらどうしようと不安だったのですが、まったくの杞憂でした。参加37名、キャンセル待ちまで出る事態に。東京はもちろん、名古屋や大阪、京都、神戸、北海道…から参加してくれた方もいて、言い出しっぺのくせに私がいちばん驚いていたかもしれません。その個性的なメンツは、公式サイトに出場者紹介コーナーがありますのでチェックしてみてください。出場者一覧見るだけでもニヤニヤできます。

http://poetryslamjapan2015.wix.com/slam#!players/c1tqs

会場はLast Waltz by Shiosaiという渋谷のライブハウス。六本木通りの渋谷二丁目交差点近くにあるビルの入り口から階段を降りて、鉄の扉を開けます。キャパシティは100人くらいでしょうか。こんなマニアックな大会にちゃんとオーディエンスが集まるのか、これまた不安だったのですが、開場後どんどん増えるお客さん…フロアの室温もあっという間に上がってきました。

開演は14時半。ここから8時間(!)にわたる熱戦の幕開けです。試合は一回戦〜準決勝戦〜決勝戦と進みます。まずは9人(または10人)ずつ4組のリーグにわかれて、ひとり1編リーディング。その中から各2名が準決勝に進みます。制限時間は3分。3分を過ぎると非情にも「ポッポ〜」と鳩時計の音が鳴り響き、強制終了させられるという仕組みです。

ポエトリースラムでは、出場者たちのパフォーマンスを審査するのは客席から選ばれた審査員。今回の大会では、客席から抽選で5人選んで審査員席に座ってもらうという、これまた過酷なシステムでした。各パフォーマンスを10点満点でジャッジするのですが、5人のうち最高点と最低点は割愛して、中3人分の合計点数で競います。つまり30点満点ということ。やってみるとこれがまた…同点のジャッジが出たり、1.0点未満の点差だったり本当に大接戦、大混戦!

一回戦が終わった時点ですでに18時半。ここで負けてしまったひとは3分間しか出番がなかったわけですが、個人的にはそのなかに「もっと聴きたい」と思う人が何人もいました。それでも大会は続きます。と、その前にここで少しゲストライブ。toto(ポエトリーリーディング)、なのるなもない(ラップ)のおふたりが、上がりに上がった会場の緊張感をすこし和らげてくれました。

準決勝に勝ち進んだのは8名。シュールレアリズムな物語詩を読む奇才がいたり、祝詞とリリックを操る神主ラッパーがいたり、出場者それぞれにスタイルが違いすぎて、ほとんど異種格闘技戦の様相を呈しています。そこからさらに決勝戦に進んだのは3名。「福島をカタカナにしたのは誰だ」太い声でメッセージを放つラッパー・大袈裟太郎、

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トリッキーなテキスト(その名も『ウン◯論』)を神業のような滑らかさで読み上げる野々宮卯妙、

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そして『イカ百選』『ウシ五十選』といったユニークすぎる作品群でじわじわと客席を虜にしていった舞台俳優・岡野康弘。

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最後はなんと0.1ポイント差で岡野さんが優勝したのでした。

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8時間にわたる長丁場、それを支えてくれたのは司会者はじめ、十数名のボランティアスタッフでした。誰ひとり欠けても成立しなかったと思います。会場に集まってくれたオーディエンス、なかでもムチャぶりにもかかわらず審査員をやっていただいた方々にも大感謝です。そしてもちろん37名の個性あふれる出場者たち。思えば自分がリーディングをするとき、しょっちゅう足が震えます。もし自分が出場していたらと考えると足も手も声も心臓もブルブルしていたと思うのです。それを考えると何よりあのステージに立ってくれたひと全員に喝采を送りたいです。実は決勝戦前の楽屋をのぞいたとき、ファイナリスト3人が和やかに話をしていてとても印象的でした。このイベントがなければ出会わなかったかもしれない、と思うとちょっと嬉しい。

そしてもうひとつ大事なこと。ポエトリー・スラム・ジャパン2015のチケット売り上げ、そして客席からのカンパで、優勝した岡野さんのパリ往復航空券代を捻出できました! パリでの滞在費や食費はフランスの大会本部が担ってくれるので、赤字ゼロ!(もちろん黒字もゼロですが)

さあいよいよ初の日本代表スラマー、ポエトリースラムW杯初参戦!…というところで、また次回。À bientôt!

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